インタビュー ウシヤマ電機株式会社

2018年09月10日

インタビュー, 特集

*このインタビュー記事は飯倉代表取締役社長が専務取締役であった2018年8月時点のものです。2019年7月1日より飯倉氏はウシヤマ電機株式会社の代表取締役社長に就任されました。

 今回はウシヤマ電機株式会社(以下、ウシヤマ電機)の飯倉専務にお話しを伺いました。ウシヤマ電機は全自動電線切断皮剥機や全自動端子圧着機などワイヤーハーネス加工機器を幅広く販売している機械商社です。電装品部材販売やWEB関連の事業「ネットショップ販売」もされています。加工機器全般に非常に詳しく海外での活動もされていて、どのようなお話しを伺うことができるか楽しみです。

――飯倉専務が入社される頃までのウシヤマ電機の歴史を教えてください。

 ウシヤマ電機株式会社は現在代表取締役を務める牛山修哉の父親である牛山修(現在は相談役)が1979年7月に創立しました。牛山修はもともと電子部品の商社や電子部品メーカの営業をやっていました。その営業経験を生かして独立し、電子部品の商社を立ち上げたのです。創立当初はダイオード、コンデンサなどの電子部品を販売していました。その後、Windows95が誕生したころから半導体ブームが巻き起こり、様々な電子部品が半導体へ置き換わっていきました。その流れもあり半導体の販売が主流となっていきます。

 このような時代背景のなか、1985年7月に株式会社小寺電子製作所(KODERA)と代理店契約を締結します。小寺電子製作所はもともと基板設計製作をしていましたが、この頃にデジタル制御式の全自動電線切断皮剥機(キャスティング)の設計開発を初めていました。私が入社したのは1995年ですが、この頃はまだまだキャスティングなどの機械販売の割合は小さく、電子部品の販売が主力で売り上げ全体の8割以上を占めていました。

――飯倉専務の経歴と入社後のウシヤマ電機の歩みを教えてください。

 私は北海道の出身です。地元北海道の大学に進学し、現社長の牛山修哉はその大学の同期だったのです。学部も下宿先も同じで、苗字の頭文字が飯倉の「い」と牛山の「う」で近いため講義で同じグループになることも多かったのです。

 大学を卒業後の1991年に証券会社へ就職することとなり、首都圏に移り住みます。証券会社では有価証券販売の営業を担当していました。部署には個人の営業成績ランキングが毎日、毎週、毎月とFAXで届けられ、ランキングが低ければ肩身も狭く上司にも怒られます。緊張感がありシビアな環境でしたので、耐えられず辞める人も多かったですよ。

 一方、牛山修哉は大手自動車販売会社へ就職し、その後ウシヤマ電機に入社します。そんなある日、牛山修哉と居酒屋で飲んでいるとウシヤマ電機に営業が不足しているという話を聞きます。証券会社での営業経験もあったので「それならば自分が!!」と思い、1994年にウシヤマ電機に入社しました。小寺製作所のキャスティングを販売することがまず与えられた仕事でした。

 入社してからは業種別電話帳を頼りに、キャスティングを購入してもらえる可能性がある電線、電機、電子関連の企業に片っ端から電話で営業をしました。10件電話をすると、2,3件は話を聞いてくれましたよ。当時は全自動電線切断皮剥機への認知度は低く、営業先が”知らない”または”持っていない”場合は導入のメリットを伝えていきました。”持っている”と言われれば小寺製作所(KODERA)の製品の良さや利点を説明しました。

 当時、全自動電線切断皮剥機は競合メーカ数社がワイヤーハーネス専門業者に向けて開発・販売をしていましたが、アナログ式で機械調整が難しく使いこなすのに技量や感覚が必要でした。一方、小寺製作所(KODERA)の機械はデジタル式で素人でも機械調整がしやすく、しかも倍近いスピードで切断と皮むきができたのです。小寺製作所(KODERA)の機械には導入に明白なメリットがあると考えていたので、有価証券よりも売りやすいと思いましたよ。(笑

 当時を思い出すと営業戦略というより行き当たりばったりの営業をしていました。バブル崩壊後だったので機械設備投資の大きな波は終わっていましたね。もっと前から営業をしていたらバブル期の波に乗ってもっと売れたのではと思います。

 少しでも需要がある業種には全て連絡をするようにしていましたが、2000年頃からワイヤーハーネスを専業で加工している企業に最もニーズがあると考えるようになり、更に顧客のニーズに対応するように圧着機やアプリケータの販売にも注力するようになりました。その他にもワイヤーストリッパー、チューブカッター、線材供給機、検査器などワイヤーハーネスの加工に必要となる商品を販売するようになっていきました。2000年に入ると時代の流れで半導体の売れ行きが急激に冷え込み在庫があふれるようになってしまいます。半導体の販売は売上が激減しました。一方、加工機械は売上の上がり下がりが少なく、急激なブームは来ませんが緩やかに世の中に浸透していきました。

 海外にも需要はありますので2000年初頭から海外営業所も開設していきました。上海拠点は中国の各地をフォローし、香港拠点は深圳周辺を開拓しています。拠点はないですがフィリピンへの販売も注力しています。タイにも拠点があり、次はベトナムにも営業所を開設します。

このようにウシヤマ電機が成長していくなか、2002年に取締役営業部長となり、2011年に専務取締役となりました。

――ウシヤマ電機の強みはなんですか?

 営業担当の一人一人が機械や性能への知識や理解力が高いことです。そのため顧客の要望に対しての解決能力や提案力があります。メーカが公表しているカタログ上の仕様や性能といった情報よりも、実際に使われている現場よりの性能を理解しています。例えば電線は、細さ太さ、柔らかさ固さ、そして固有の癖があり、季節や温度の変化にも影響を受けまるで生き物のようです。この電線を機械にセットして切断していくときに、微妙な調整をしたり部品を足したりすることが時には必要になってきます。こういった提案は、繰り返し機械を使って覚えていかなければなりません。機械メーカの代理として、顧客の意見を聞き、自ら試して知識を蓄えてより良い提案や解決方法を追求しています。

 また取引先のメーカと親しく良好なネットワークを持っていることも強みです。取引先メーカは80社ほどあり情報も集まりますし、新しい機械の製作や改造の相談もしやすい環境があります。そのため顧客に、このような機械があると提案できたり、またこのような機械を作ることができるといった提案をすることが出来るのです。顧客が知らないエンジニアリング会社やメーカは多数あり、様々な要望に対応してくれる可能性があります。

――営業として心掛けている事、部下に伝えていることを教えてください。

 「当たり前のことを当たり前にやる」ということを心掛けています。当たり前のことというのは例を挙げればたくさんあります。例えば「連絡や見積依頼があればすぐに対応する。」、「納期回答など顧客に伝えなければいけない情報を曖昧にせずにしっかりと伝える。」、「出来ない事は正直に出来ないと言う。」、「優先順位を考えて行動する。」、「販売のアフターフォローを責任をもっておこなう。」などです。アフターフォローに関しては機械を導入したが思ったように使えないといった事態がおこったときに、しっかりと提案・解決をすることが重要です。私たちの仕事の価値はそもそもお客さんに機械を提案し実際に効率が上がったり、業績が上がったりと喜んでもらうことです。アフターフォローにしっかりと責任を持たなければ、顧客に喜んでもらえません。こういったことができていない営業が多いと思います。

 人ができないことをやるのは難しいことです。しかし「当たり前のことを当たり前にやる」
のは出来るはずです。トラブルの対応などは、すぐに対応すれば問題は小さくて済みますが、放っておくと大変な問題に発展してしまいます。すぐに対応すべきです。

 この「当たり前のことを当たり前にやる」という考え方は部下にも指導しています。ワイヤーハーネス業界は約束が曖昧な風潮もあったりしますので大切にしています。

 また、部下には仕事を楽しめているかどうかを問いかけます。もちろん、面白おかしくという意味ではなくてです。辛いのは続かないですよ。辛い営業をしてきたのでわかります。(笑

 自分と取引してもらえたことによってお客さんが得をして喜んでもらえたかどうか。注文をもらえると嬉しい。よかったと言ってもらえると本当にうれしい。その気持ちを忘れないで仕事をしてほしいです。なんで機械を売っているかを新人に問います。売上はもちろんありますが、根本は「お客に喜んでもらうため」です。

――これからの方向性や業界の変化はどう捉えていますか?

 販売会社なのでニーズがあるところに機械を販売していきます。既にお伝えしましたが海外にもニーズはありますので海外拠点は注力していきます。海外では日系メーカーの部品材料もニーズがあり輸出している。海外で入手できない、納期の遅れがあるといった問題があるようです。海外拠点からのニーズに関して出来るだけ対応して、困っていることを解決しています。

 海外展開のローカル企業は初めは人海戦術に頼り設備投資はあまり大きくはしないことが多いですが、徐々に賃金が上がり始めると設備投資に目が向きます。それぞれの国の経済発展状況によって設備投資の需要は変わってきます。

 昔は国内に同業の代理店商社が10社ほどありましたが、現在は社数も減っていますし営業人員も少なくなっています。世代交代に問題を抱えている企業も増えています。今の時代は世代交代が進んでいるということが取引をするうえでも不安が少なくメリットになってきているように思います。ウシヤマ電機はお客様の多様なニーズにこたえられるよう営業人員を増やし対応力をあげられるよう日々努力しております。海外営業にも対応できるよう現在は中国語、韓国語、英語の三カ語での問合せにも対応しています。

 国内には古い機械も多いので買替需要やメンテナンス需要はまだあると感じています。以前は関東一都六県と東北を中心に営業してきましたが、同業の代理店商社も少なくなり北海道から九州まで全国区で活動しています。加工機械をいろいろ扱っているので何かあれば是非ご相談ください。困っていること、改善したいことを言ってもらえれば対応します。

 飯倉専務が仰っていた「当たり前のことを当たり前にやる」というのは実は高い意識が必要で、なかなか普通では出来ない事だと思いました。また、有言実行して結果を出す飯倉専務のバイタリティーは尋常ではないと感じました。余談ですが、ウィンタースポーツもかなりの腕前だそうで、日本スノーボード協会の理事をしてらっしゃるそうです。こちらの活動ももっとお話しを聞いてみたいですね。

 インタビューのときにはワイヤーハーネス加工に関するいろいろな機械を教えてもらいました。意外と知らない機械も多いことに驚きました。大変勉強になりました。

飯倉専務、ありがとうございました。

ウシヤマ電機株式会社 飯倉専務

http://www.ushiyama.co.jp/

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