インタビュー 中央電材株式会社

2017年10月30日

特集

 今回は中央電材株式会社(以下、中央電材)の榊原社長にお話しを伺いました。中央電材はケーブルやワイヤーハーネスに使用する配線材料・部品を取り扱われている商社で、ワイヤーハーネスの加工品も扱われています。榊原社長は新規営業所や海外拠点の立ち上げなどを手掛けられてきた方です。どのようなお話を聴くことができるか楽しみです。

――榊原社長の経歴を教えてください。

 城西大学経済学部に在籍していたころはアメリカンフットボールの体育会に所属していました。大学卒後の1991年にトヨタ系の自動車販売店に就職します。川越で営業を2年経験してから、人事課の採用推進本部を2年経験しました。その後、トヨタレンタリースの法人リース部門の営業を6年経験しています。

 結婚して子供も生まれたこの頃、休みと成果報酬による収入が不安定なこともあり、家族のことも考慮して転職を考えていました。29歳でした。そんなある日、中央電材の求人を新聞の折り込みチラシで見かけます。これまでの経歴とは全く畑は違いますが法人営業という共通点があり、自宅と近い川越が勤務地であったため応募しようと思いました。

 縁もあって採用となり、川越営業所に配属され半導体の試験装置を製造しているメーカの営業担当となりました。その後、埼玉北部に商品を納入するために埼玉県の久喜に営業所を立ち上げる計画があり、立ち上げに参加して課長となります。2007年に仙台営業所が開設され、このタイミングで久喜営業所の所長となりました。2009年にはリーマンショックが起き、事業再編の流れもあって川越営業所が無くなってしまいます。この年に仙台と久喜営業所の所長を兼任することになります。もともと、いずれは川越営業所に戻るという予定だったのですが戻る場所が無くなってしまいました。(笑 

 2010年頃になると主要顧客に中国への海外展開の流れがあり、中国ビジネスについて調査を開始しました。いずれは海外展開が必要だと考えていました。2011年に東日本大震災が起こり、仙台営業所が被災します。被害はさほど大きくなかったため1ヵ月ほどで営業が再開できる状況になりましたが、中国展開は一時期ペンディングとなります。震災後はケーブルや配線材料への代替品需要が高く3ヶ月程度で売上が回復したため、再び中国展開を進めていきました。

 2012年に中国の蘇州にて創奥貿易(蘇州)有限公司を登記し10月からは総経理として中国へ赴任します。様々なご関係者の支援を頂きながら中国拠点の立ち上げと拡大に汗を流しました。中国拠点も軌道に乗り、2017年3月31日に代表取締役社長となり現在に至ります。

――中央電材の強みはなんですか?

 拠点が多く顧客の近くで活動することにより、対応や提案にスピードがあり小回りが利くことが特徴です。購買担当や開発担当の方が困っていることに対して、素早く提案をすることが最大の強みです。営業担当者にはある程度の裁量で見積価格の決定権限を持たせているためスピード感のある提案が可能となります。

 商材としては産業用やロボット用の特殊ケーブル、高周波ケーブル、カスタム仕様のケーブルに強みがあります。国内メーカはほぼ取扱っており幅広い商材を提案でき、また海外規格に対応した商材も得意な分野です。

 同業の大手企業はスケールメリットが特徴ですが、弊社は少量・多品種・短納期を強みとしています。例えばケーブルの切断販売を扱っており、在庫品であれば当日出荷することができます。

 また、ワイヤーハーネスのアッセンブリーも取り扱っています。中国拠点もあり日本レベルの品質を保ちながら低価格でワイヤーハーネスを提供できる体制を持っています。

――これからの中央電材の方向性

 ケーブル加工やアッセンブリー分野を拡大し、制御盤や簡素な機械装置の製造を手掛けていきます。自社工場の拡大を検討中で、短納期への対応と品質管理体制を再整備しようと考えています。

 また、アッセンブリーを担当して頂いている協力会社との関係を強化していきます。今までは個々の営業担当者がそれぞれ協力会社と関係を構築していましたが、社内でその情報を共有しより効率の良い対応と製造体制を整えていくことが必要です。各協力会社は得意な製造分野が違っていて、各社各様の特徴を持っています。引き合いや受注に対してより効率の良い振分け役となりたいと思っています。ラグビーで言うとスタンドオフのような役割ですね。

 中央電材の売り上げ全体の約3割がワイヤーハーネスのアッセンブリーによるものですが、今後はそれを拡大していく予定です。加えて営業エリアの拡大も推進していきます。各地にサテライトオフィスを設置して、種をまきながら活動範囲を拡大しています。画像系装置のニーズも高いと感じており、その方面にも注力していく予定です。

――これからのワイヤーハーネス業界はどのようになっていくのでしょうか?

 ワイヤーハーネスの製造は自動化が難しいため、今後も残っていく業界だと考えています。日本人だからこそ出来る作り込み、日本でしかできない物があります。市場のパイ自体は増加していかないかもしれませんが決して暗い先行きではないのではないでしょうか。やり方次第で生き残れ、海外とも戦えると思います。

 ワイヤーハーネスの代替品としてFPCやFFCが挙げられますが、数量がある場合に向いています。光ケーブルも代替品ですが長距離伝送に向いています。アルミ電線は自動車業界で特に使用されていますが、産業機器のような電気的特性が重視される分野やロボットのように屈曲性が求められる市場では代替はまだ難しいでしょう。ワイヤーハーネスの種類は多岐に渡り、様々なニーズがあります。製作するにもノウハウが必要です。現行のようなワイヤーハーネスは、今後も使用され続けると見ています。

――営業のコツや大切にしていることを教えてください。また部下にはどのように指導されていますか?

 感覚が大事です。お客さんが望んでいるものを察し、それにアジャストした提案ができるかどうか。要は「空気が読めるか」ということです。質問や発言の意図、その先を読む能力は営業にとって非常に重要です。加えて誠実さも必要だと考えています。例えば出来ない事は出来ないと正直に言えることは信頼に繋がります。

 私は「あっさり、しつこく」と部下に指導しています。訪問したときにお客さんが忙しそうであれば、すぐに引き、次の訪問の機会を作り何度も足を運びます。続けているうちにお客さんの状態や抱えている問題を感じ取り、提案のチャンスが来るのを待ちます。

 中央電材の営業教育ではまず出荷業務を1ヵ月経験させます。実際に商品を見てどのような商材を取り扱っているのか、またどのような手順で商材が流れていくのかを理解させています。次に部下が上司に同行して営業訪問するOJTをおこないます。部下を同行させて背中をみせ、今度は部下にやらせてみてアドバイスを与えます。慣れてきたら小口の顧客を担当してもらい徐々に大口顧客の担当として活躍させます。中途採用が主流ですが新しく入った人材はだいたい3年ぐらいである一定のラインに成長してきます。これ以降からは各人の空気が読める能力や営業手腕によって成長や成果に開きが出てきますね。

――代表取締役社長になられた経緯はなんでしょうか。

 中国拠点の立ち上げや、それ以前にも久喜営業所の立ち上げなど新しいものを創り出すところが評価されたようです。中国ビジネス立ち上げのときは中国に出なければいけないという危機感を持っていましたが、成功の確信の無いなか3年を目途に中国展開にチャレンジさせてもらいました。任せてもらえれば成功させたくなる。期待には応えたくなるタイプなんですかね。(笑

――若手にメッセージをお願いします。

失敗を恐れず、前を向いて積極的に進んでほしい。提案を押しつけるのでははくお客様のニーズ、情報をいかに引き出し、それに合った内容で素早く提案を出来るかが重要。「あっさりしつこく」で頑張って欲しいと思います。

――インタビューを終えて

 榊原社長がもともと現在とは全く違う自動車車・リース業界で活躍されていたことには驚きました。営業のご経験が非常に長く様々な成果を残されているため、営業に関するお話しは特に参考になりましたね。日々の活動に生かしてみてはいかがでしょうか。榊原社長と一緒にいるとなんだか安心します。包容力を感じました。またの機会にいろいろお話しをお伺いしたいです。今度は拠点の立ち上げについても詳しくお聞きしたいと思いました。

榊原社長、ありがとうございました。

中央電材株式会社 榊原社長

http://www.chuo-dz.co.jp/index.html

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