ワイヤーハーネスの組立外装工程

2017年03月31日

加工・検査・技術

 ワイヤーハーネスの加工における組立外装工程は圧着や圧接、半田など結線工程を終えた仕掛品を完成品へと組立てる工程です。組立外装工程の作業は種々あり、作業性を考慮して圧着や圧接、半田などの工程の前におこなわれる作業もあります。以下、組立外装工程の各種作業を紹介します。なお、工程の順番は製作するワイヤーハーネスによって前後します。

・配線組立
 複数の電線やケーブルを組み合わせたワイヤーハーネスを製作する場合は、配線同士を組み立てる作業が必要となります。特に電気回路が数十~数百といった分岐が多く複雑な配線は、配線を効率良く、間違えが無いように組立てるために専用の配線治具を作製します。専用の配線治具は木板に図面を貼り、主な配線や分岐点に釘やU字治具などを打って作製されます。配線組立は、電線の識別や配置の機械化が難しく手作業が主流です。

・結束
 電線やケーブルを組み合わせたワイヤーハーネスを製作する場合に組みわせた配線を結束バンドで固定する作業があります。結束作業では配線の結束したい位置に結束バンドを巻き付け仮止めし、専用工具で締め付け且つ余分なバンドを切断します。専用工具は銃のような形をしていため、ピストルやガンと呼ばれています。結束は専用工具を用いた手作業が主流です。

・コネクタ、ハウジング挿入
 圧着した端子をコネクタやハウジングに挿入します。挿入時はカチッと音がするまで挿入します。正しく挿入された端子は端子のランスが開き、引張っても抜けないように設計されています。端子の挿入後は少し引張って正しく挿入されているか確認します。端子はコネクタの正しい位置に挿入しないと、誤配線という重大な不良に繋がるので注意が必要です。コネクタ、ハウジング挿入作業は手作業が主流です。

・チューブ収縮
 圧着工程前に事前に挿入していた熱収縮チューブと呼ばれる高温(90℃~115℃程度)で収縮しケーブル・電線に密着する保護チューブを所定の位置に配置し、ドライヤーによって熱を加えてチューブを収縮させ固定します。チューブに印字があり銘板の役割がある場合は、指定通りの向きで固定します。ドライヤーによって熱を加えすぎると周囲が変形、変色したり部材が損傷してしまうので注意が必要です。チューブ収縮作業は手作業が主流です。

・スリーブ、キャップ、ワイヤーシール装着
 圧着工程前に事前に挿入していたスリーブ、キャップ、ワイヤーシールを端子の圧着部やコネクタ、ハウジングの付け根に装着します。スリーブ、キャップ、ワイヤーシールは端子の保護、防水、防塵などの機能がありますので、しっかりと装着しましょう。スリーブ、キャップ、ワイヤーシール装着作業は手作業が主流です。

・カバー取付
 ハウジング挿入、半田、圧接工程などを終えたコネクタ部にカバーを取り付ける必要がある場合、カバーの取付をおこないます。カバーは通常左右対称な2つの部品に分かれていて、コネクタの所定の位置にカバーを取り付け、ネジやプラスチックの爪で固定します。カバーにはロック用ネジ、ケーブルクランプなど他にも取り付ける部品がある場合もありますので、忘れずに装着しましょう。カバー取付作業は手作業が主流です。

・銘板取付
 各端末部や分岐部分に、銘板と呼ばれるテープやチューブに行き先や信号名を印字したものを取り付けます。テープ式の銘板はコネクタやハウジング、ケーブルに直接貼付けたり、結束バンドに貼付けて所定の場所に結束したりして固定します。なお、ケーブルに直接銘板を貼り付ける場合は、銘板の剥落を防止するため、銘板に透明のテープを上から巻き付けて保護することがあります。

 チューブ式の銘板は組立前の工程ですでに装着済みであるか、または結束バンドに通して所定の場所に結束して固定します。銘板取付時には印字文字の向きが正しいか注意しましょう。銘板取付作業は手作業が主流です。

・フェライトコア取付
 ノイズ対策のためにフェライトコアをケーブルに取り付けます。フェライトコアはケーブルから発生する磁気エネルギーを集めフェライトの磁気損失によって熱に変換消費するため、ノイズをカットする役割があります。フェライトコアは通常左右対称な2つの部分に分かれていて、中央部に穴が空いて電線・ケーブルが通るような構造をしています。電線・ケーブルをフェライトコア中央部の穴に通し、ストッパーからカチッと音がするまではめ込んで取付けます。なお、電線・ケーブルは巻いて通す場合もあります。フェライトコア取付作業は手作業が主流です。

・テープ巻き
 配線組立をした電線・ケーブルにビニルテープを巻き付け、覆い隠すように束ねて結束し且つ保護します。通常、配線組立の専用治具に取り付けられた状態でテープ巻き作業はおこなわれます。配線によって種々のカラーテープを用いることで色によって配線を識別する場合もあり、結束・保護を目的とせず識別だけのためにテープを巻くこともあります。テープ巻き作業は手作業が主流です。

・保護チューブ取付
 配線組立をした電線・ケーブルにコルゲートチューブ、スパイラルチューブ、ジッパーチューブなどを取付け電線・ケーブルを結束し且つ保護します。各チューブは柔軟性が高く、耐摩耗性、耐熱性、耐燃性、耐電性などに優れています。

 コルゲートチューブは蛇腹形状をしていて、スパイラルチューブはスパラル形状をしています。ジッパーチューブは遮蔽材とシートで構成されており、配線を包み込みながらジッパー、ホック、マジックテープなどでシートを閉じられる構造となっています。スパイラルチューブやスリット入りのコルゲートチューブ、スパイラルチューブ、ジッパーチューブは配線組立後やコネクタ、ハウジング挿入後でも取付けが可能です。スリット入りのコルゲートチューブ取付け後はテープを必要箇所に巻いて、取れないように固定する必要があります。保護チューブ取付作業は手作業が主流です。

・洗浄拭き取り
 ワイヤーハーネスに付着している汚れをスポンジや雑巾を用いて拭き取り洗浄ます。ワイヤーハーネスは製作中に机や床で擦れて汚れが付着してしまったり、そもそも納入部材に汚れが着いている事もあります。水で拭き取り汚れが落ちない場合は洗剤やイオン水、有機溶剤などのクリーナーを用いて拭き取りましょう。洗浄拭き取り作業は手作業が主流です。

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