インタビュー 株式会社ナックコーポレーション

2018年03月01日

特集

 今回は株式会社ナックコーポレーション(以下、ナックコーポレーション)の中川社長にお話しを伺いました。ナックコーポレーションはワイヤーハーネスの検査器メーカとして業界で知らない人はいないほど有名です。著名な検査器がどのように開発され発展してきたのか、非常に興味深いですね。他にも検査器業界の状況など貴重なお話しを伺うことができそうです。

――中川社長の経歴やナックコーポレーションの設立経緯を教えてください。

 私はもともとゲーム機のハードやソフトを開発する会社に勤めていました。タイトーやナムコ、セガなど世間によく知られたゲームメーカの仕事を担当していました。ところがある日、この会社が倒産してしまいます。その後、考えた末に今までの経験を活かして企画を販売する会社を創ろうと起業しました。このような企業形態であれば資本もいらず始められます。ところが自分が思ったようにはうまく行かず、大手企業のソフト開発の請負や開発のお手伝いをして生計を立てていました。

 その一方、倒産してしまった元勤務先の同僚であった菅野昭一がワイヤーハーネスを組立している企業に就職します。菅野はワイヤーハーネスの組立をしている企業が独自にワイヤーハーネスの検査器を開発し、自社で活用しているのを見て閃きます。「ワイヤーハーネスの検査器を開発・販売してはどうか」と。
 
 菅野と私は前職の経験からワイヤーハーネスの検査器開発の道筋をある程度は描くことができ、市場環境から見てもビジネスチャンスがあるのではないかと意気投合しました。

 そして、菅野がナックコーポレーションに入り2人でワイヤーハーネスの検査器開発を開始します。ニッチな市場でトップを目指そうと考え、開発は一貫して世に無い高性能な製品を目指し、機能や品質にはこだわりました。例えば検査器内部のIO基板には当時2社しか創れない高品質の8層基板を使いました。基板は層数が増えると多様な回路を引くことができるため、より高機能でコンパクトな検査器を設計することが出来ます。また、接点にリレーではなく半導体を使用することによって検査器の寿命を劇的に伸ばしました。開発費用は実は当初予定していた金額よりも何倍も高くなってしまったのですが、良い製品を開発するために妥協はせずなんとか資金を工面して前に進み続けました。

 機体の小スペース化、操作性、表示画面の見やすさ、低価格、故障しない構造など様々な側面から検討を重ね1990年についに初代検査器としてNM30Xを完成させます。NM30Xはワイヤーハーネスの導通試験・瞬間断線試験・耐圧試験・絶縁抵抗試験を1台で実行できる”マルチチェッカー”で操作性に優れ省スペースで故障しにくい検査器です。競合他社と比較して高性能で、競合他社が500~800万円程度の価格帯で販売しているところ、弊社は210万円程度という価格設定を実現させました。そのため検査器業界に大きなインパクトを与えます。

 NM30Xを開発後は顧客に製品を認知してもらうのに大変苦労しました。一度製品を購入して使ってもらえれば良さを理解してもらえてリピート注文に繋がるのですが、1度購入してもらうまでの道のりが長いということを思い知りました。展示会に出展したり、電子専門誌に広告を掲載したり、製品の広報アピールに尽力してきました。

 苦労の甲斐もありNM30Xは累計500台以上を販売することができ、ナックコーポレーションはワイヤーハーネスの検査器メーカとして広く認知され、更に高性能で低価格な機種や機能を絞って低価格な製品などを開発し続けています。

――他社と比較してナックコーポレーションの強みはなんですか?また人気な機種を教えてください。

 ワイヤーハーネスの検査器市場において、高品質であり低価格であることが大きな強みです。それを実現するために最新のデバイスを取り入れたり、安価で性能が良い部品を探したり、部品の共通化により部品点数を少なくしたりと様々な努力をしています。また全社内設計開発ですのでカスタマイズにもすぐに対応が出来ます。長年に渡る部品供給業者との付き合いも弊社の強みですね。

 ナックコーポレーションは2000年頃から導通試験専門の機種など、初めに開発したNM30X以外の製品の開発を進めてきました。

 人気な機種としては2012年にリリースしたNMGが挙げられます。NMGは初めて開発したNM30Xを更に高性能にし、そして価格を従来よりも大幅に抑えています。高性能な機種であり従来よりお求めやすい価格となっていますので、購入される顧客層がぐっと広がっています。費用対効果が高く他社製品を圧倒していると自負しています。航空・宇宙分野などにも使用されていますね。
 
 また、2012年にリリースしたNMSシリーズが中国で非常に人気で、生産が追い付かないほどです。NMSシリーズは瞬間切断試験専門の機種です。中国では品質のバラつきが多く、ワイヤーハーネスは作るだけ作って不良なら捨てるという考え方を持っています。良品を見抜くために瞬間断線試験のニーズが高いようです。
 
 2013年にリリースしたNMFシリーズも好評です。NMFシリーズは自動車・鉄道、建機・重機などに使用される多ポイントのワイヤーハーネスに対応した検査器です。ポイント数はユニットを増減させることで256~8192まで対応可能です。短納期での納入を可能としています。もちろんカスタマイズすれば8192ポイント以上の機種も提供できます。

――製品開発において大切にしていることは何ですか?

 商品を作るときに妥協は一切しません。お客様の課題やニーズを把握した上で、常により良い発想やアイデアを出し合うことを大切にしており、100%社内開発にこだわっております。

 時代が移るにつれケーブル検査の考え方も変わっていきますので常に最先端である為の情報収集をしなければいけません。また、最新デバイスの活用や部品の共通化など高品質低価格を実現するために努力をしています。

また、一見は無駄と思えるような部分や人の感性に訴えるような要素を大切にしています。

 どんな商品にも機能には無関係な無駄があります。形状デザインや質感、色使い、それこそが商品だと思います。機能を重視し無駄を一切省き、四角い箱の中身は高性能だとしても、よくできた商品にはなり得ないと思っています。一見無駄と思えるような点にもあえてこだわり「これは面白い。」、「これはユニーク。」と必要な無駄を取り入れて開発をしています。

 近年は検査器周辺のアプリケーションも開発にも注力しています。自動マーカのNM PEN4はその一例です。自動マーカには従来ソレノイドを使用していて、ペン先が摩耗しやすいという問題を抱えていました。NM-PEN04は可動部にソレノイドではなくモータとワイヤーを使用することによりこの問題を含め多くをアイデアで解決しました。その結果モータ使用の自動検査装置分野への進出も視野に入ってきました。

――若手にメッセージをお願いします。

 やりたいことを見つけて、是非起業してほしい。若い人が新しいものをつくって日本を元気にしてほしいと考えています。

 私はよく社内で「マンナンライフのこんにゃくゼリー」の話をします。この商品は古くからどこにでもある「こんにゃく」というものに、新たな食感や低カロリー、健康に良いなど新たな付加価値を付けています。このように何の変哲もない素材でも、良い発想があれば新しい商品へと繋がっていくのです。ワイヤーハーネスの検査器も同じです。今までにないアイデアを盛り込まないと、人は振り向いてくれません。情熱を絶やさず、新しいことに真摯に取り組んでください。

――インタビューを終えて

 中川社長はまさに起業家です。人がなかなか出来ないようなことに対して、信念を持ち続け実現することが出来る中川社長に尊敬の念を抱きました。近年の日本では、起業家精神を持った若者が少なくなっていると言われています。中川社長の熱い気持ちに触れる事ができ、勇気をもらいました。

 また高品質で低価格な検査器を追求し続けるナックコーポレーションがこれからどのような機種をリリースしていくのか、また世界の検査器市場にどのようなインパクトを与えリードしていくのか、期待に胸が踊ります。

中川社長、ありがとうございました。

株式会社ナックコーポレーション 中川社長

https://www.naccorporation.com/

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