ワイヤーハーネスの導通検査工程

2017年03月31日

加工・検査・技術

 ワイヤーハーネスの製造における検査工程は検査工程は導通検査、引張試験、外観検査工程に分類されます。導通検査工程ではワイヤーハーネスの電気的な性能を検査します。導通検査工程について代表的な方法であるハーネステスターを用いた検査とブザーテスターを用いた検査を以下ご紹介します。

<ハーネステスターを用いた導通検査>
 ハーネステスターは主に導通、耐圧、抵抗、瞬断、絶縁抵抗試験の5つの検査機能を持っています。ハーネステスターの種類によってどの試験に対応しているか違いがありますが、導通試験は共通して対応しています。検査するワイヤーハーネスは検査治具を介してハーネステスターに接続することができます。よって検査するワイヤーハーネスに勘合し適応した検査治具を都度製作する必要があります。接続が完了したら、検査条件をハーネステスターに入力し各種試験をおこないます。

以下、各種試験内容を紹介します。

・導通試験
 全回路をを読み取って断線・短絡・誤配線・余剰配線を高速で検査します。まず正しい回路で製作されたワイヤーハーネスをハーネステスターに接続しスキャンして、サンプルとして正しい回路をハーネステスターに記憶します。次に検査したいワイヤーハーネスを接続して、導通試験をおこなうと合格か不合格か判定されます。不合格の場合は配線にどのような異常があるか通知されます。

・耐圧試験
 ワイヤーハーネスに高電圧を印加(電気回路に電源や別の回路から電圧や信号を与える事)し、異極導体間に放電現象がないか検査します。通常使用する程度の電圧では正常に導通するが、何らかの不具合で導体同士が近接している場合は高電圧を印加すると短絡してしまうことがあります。耐圧試験により意図していない通電による不具合の可能性を検知することができます。

・抵抗試験
 ワイヤーハーネスの任意ポイント間の抵抗値を回路毎に検査します。回路は正常に導通していれば電気抵抗値が低く0に近い値となります。逆に断線していると電気抵抗値が非常に高い値となりますが、導通はするが圧着、半田、圧接状態が良好でないなど何らかの不具合が起きている場合は数十~数百オームといった抵抗値が検出されることがあります。抵抗試験は見つかりにくい不具合の可能性を検知することができます。

・瞬断試験
 ワイヤーハーネスに衝撃や振動、屈折、引張などを与えたときに瞬間的に発生する断線が起きているかどうか検査します。瞬断とは電源からの電力供給が数マイクロ秒から数百マイクロ秒といった非常に短い時間で絶たれてしまう電源障害現象です。ワイヤーハーネスに外部から衝撃や振動、屈折、引張など動的な刺激を加えながら瞬断試験をおこない、瞬断が起きていないかどうか検査します。静止している状態で導通試験は合格するがワイヤーハーネスの取付時、取付後の稼働時などに不具合が発生する場合は瞬断試験により不具合の可能性を検知することができます。

・絶縁抵抗試験
 ワイヤーハーネスに高電圧を印加(電気回路に電源や別の回路から電圧や信号を与える事)し異極導体間の抵抗値が設定値以上であるかを検査します。導通していない導線同士は電気を通さない絶縁状態にあります。しかし高い電圧をかけると僅かに電流が流れ、この時の抵抗値を絶縁抵抗といいます。絶縁抵抗値が低いと絶縁の度合いが低く、漏電や短絡の危険性があります。ワイヤーハーネスの絶縁抵抗を測定することにより絶縁の度合いや不具合の可能性を検知することができます。

<ブザーテスターを用いた導通検査>
 ブザーテスターは2点間の導通を検査する測定器です。ブザーテスターは種類によって導通の他にも電圧、電流、抵抗、温度、静電容量など様々な値を測定できる機能を持つ機種もありますが、ワイヤーハーネスの導通検査工程においては導通機能だけでも十分です。ブザーテスターは測定器本体とテストリードと呼ばれる先端の尖ったこてで構成されています。

 テストリードの先端を導通を確認したい2点間に当てると、導通している場合にブザーがなります。ブザーテスターを用いた導通検査工程ではワイヤーハーネスの各端子、コネクタピンなどの回路に順々にテストリードを当て全ての回路が正しく導通しているか検査します。

 ハーネステスターを用いた導通検査に比較して、検査の時間はかかりますが検査治具を作る必要がないため治具製作の手間は不要です。なお、ハーネステスターの方が高性能で高価です。

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