ハーネスチェッカーの原理

2018年06月27日

加工・検査・技術

ワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)はどのような原理でワイヤーハーネスの検査をおこなっているのでしょうか。ここではワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)の構造や検査項目の原理の概要を説明します。

 ワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)の構造は大まかに以下のようになっています。

ワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)の構造

ワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)の構造

 この図はワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)と検査対象であるワイヤーハーネス(青線)、その二つを繋ぐ検査治具・接続治具(緑線)が接続された状態を描写しています。検査器は主に検査回路、制御回路、ソフトウェア、画面表示、外部入出力、スキャナ・スイッチャーで構成されています。これらの構成部分が相互に働き合うことによって様々な検査機能が実現されます。

 以下、各検査機能の原理を大まかに説明していきます。

導通検査の原理

 導通検査では検査されるワイヤーハーネスが電気的に正しい回路になっているかどうかを検査するために断線(オープン)と短絡(ショート)が無いかどうかを確認します。本来、電気的に繋がっていなければならない箇所が繋がっていないことを断線、繋がってはいけない箇所が繋がっていることを短絡といいます。また、誤配線はこの断線と短絡の複合状態とも解釈できます。

 検査は基本的に端末を総当たりでチェックしていきます。例えば以下のような10個の端末を持つワイヤーハーネスの導通検査を総当たりでおこなう場合は、まず1に着目すると1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、1-7、1-8、1-9、1-10の全ての導通をチェックして1-6のみが繋がっている事を確認します。次に2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8、2-9、2-10と全て導通をチェックして2-7のみが繋がっている事を確認します。このように3,4,5,6,7,8,9と同じようにチェックすると全ての回路の繋がりの可能性を検査するのが総当たり検査です。

例1 端末が10個の配線(正しい配線とする)

 ワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)ではボタンやPC画面から検査開始の情報が入力されるとソフトウェアがその情報を認識して検査器内部の回路に指令を出します。その指令を受け制御回路がスキャナ・スイッチャーの開閉を制御して検査対象物へ電流を流し、総当たりの回路の導通(電気が流れるか)を検査回路で認識します。総当たりの導通を確認して、その結果が正しかったかまたは間違っていたかをソフトウェアが判断します。検査の結果は、検査器の画面で表示されデータとしても保存が可能です。また、外部に印刷物やデータとして出力することもできます。このような仕組みで導通検査はおこなわれています。

導通検査について、詳しくはこちら

耐圧検査(耐電圧検査)

 耐圧検査では検査対象となるワイヤーハーネスに高電圧をかけ(印加し)、絶縁破壊が起こらないかを検査します。絶縁破壊が起こると本来は電気的に繋がってはいけない部分に放電が起こり、火花が散ったり、電線の被覆やワイヤーハーネスの構成部品が燃えたりしてしまいます。

 耐圧検査ではワイヤーハーネスにかける電圧(V:ボルト)と印加する時間(T:タイム)を設定する必要があります。設定値はワイヤーハーネスの設計者(設計を担当している企業)が製品としての妥当な値を決定します。一般的には各社の規定、ワイヤーハーネスの使用環境、電線やケーブルやコネクタの規定値を参考にしてVとTを決定します。例としてVは100~1000Vといった高電圧、Tは1回路あたり1秒~60秒などで検査されています。

 耐圧検査機能を持つ検査器の検査回路は高電圧出力回路であり、かつ電流測定が出来るようになっています。またスキャナ・スイッチャーなど電流が流れる部分も高電圧に耐えられる仕様となっています。検査器では導通検査と同じような仕組みでソフトウェア、制御回路、検査回路が働きワイヤーハーネスの必要箇所に耐圧検査をおこないます。

絶縁抵抗検査

 ワイヤーハーネスに高電圧をかけ(印加し)、電気的に接続されていない異極導体間の抵抗値が設定値以上であるかを検査します。導通していない電線同士は電気を通さない絶縁状態にありますが、高い電圧をかけると僅かに電流が流れ、この時の抵抗値を絶縁抵抗値といいます。電気的に接続されていない導体間の電気抵抗値は非常に高い値となります。絶縁抵抗値が低いと絶縁の度合いが低く、漏電や短絡の危険性があります。

 絶縁抵抗検査機能を持つ検査器の回路は耐圧検査と同様に高電圧出力回路であり、かつ電流測定が出来るようになっています。印加した電圧Vと検査回路で測定した電流(I:Intensity of Current)から、オームの法則を用いて抵抗値(R:Resistance)を計算しています。

オームの法則 V=IR ( R = V / I )

 絶縁抵抗検査での絶縁抵抗値の設定値は耐圧検査同様にワイヤーハーネスの設計者(設計を担当している企業)が妥当な値を決定します。

導通抵抗検査(導体抵抗検査)

 ワイヤーハーネスに電流を流し、接続されている導体の抵抗値の測定を行います。
導通検査と混同され易いですが、導通抵抗検査はワイヤーハーネスの抵抗値そのものを検査します。
 ワイヤーハーネスの回路は正常に導通していれば電気抵抗値が極めて低い値となり、逆に断線していると電気抵抗値が非常に高い値となります。導通はするが圧着、半田、圧接状態が良好でないなど何らかの不具合が起きている場合は数Ω~数百オームといった抵抗値が検出されることがあります。このような原理で導通抵抗検査では導通検査から見つかりにくい不具合の可能性を検知することができます。

 導通抵抗検査機能を持つ検査器の回路は定電流出力回路であり、かつ電圧測定が出来るようになっています。流す電流(I:Intensity of Current)と測定した電圧(V:Volt)から、オームの法則を用いて抵抗値(R:Resistance)を計算しています。

瞬断検査

 瞬断検査ではワイヤーハーネスに衝撃や振動、屈折、引張などを与えたときに瞬間的な断線が起きていないかどうかを検査します。静止状態での検査ではないのが他の検査と比較して大きな特徴となります。

 ワイヤーハーネスの場合、導通している導体間の電圧はほぼ同じ(同電位)となるはずですが、断線が起きると電圧の差(電位差)が生じます。この電位差が印加している電圧の50%を超えたときに瞬間断線が起きていると判定します。瞬断検査時の電流Iは150mA以下の直流で、電圧Vは10 V以下とします。瞬断が起きたと判定する時間間隔の推奨時間は1μs,10μs,100μs,1ms,又は10 msです。一般的に瞬断検査は、決められた振動か衝撃を加えて行なわれます。振動の場合は数時間から数十時間と長い時間になりますが、衝撃は短い時間で終えることができます。

 ワイヤーハーネスの場合は、導通検査、耐圧検査、絶縁抵抗検査、導通抵抗検査、そして瞬間断線検査を連続した一連の検査として行なうケースが多く見られます。

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