ワイヤーハーネスの導通検査

2018年06月18日

加工・検査・技術

 ワイヤーハーネスの導通検査は検査されるワイヤーハーネスが電気的に正しく繋がっていて、その電気回路が正しいかを確認する検査です。ワイヤーハーネスの電気的な検査では最も主流で、品質が厳しい自動車業界でも電気的な検査は導通検査のみとしている場合もあります。

 ワイヤーハーネスの検査についての規格は存在しませんが、電線とコネクタの試験に関してはJISで規格されています。そのためワイヤーハーネスの検査は電線とコネクタのJIS規格を参考にしています。
 具体的に参考とされている規格はJIS C 5402「電子機器用コネクタ試験方法」とJIS C 3005「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法」です。

 ワイヤーハーネスの検査の項目のなかでも導通検査はJIS C 3005「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法」を参考としていて、JIS C 3005 4.5 導通 には以下のように記載されています。

「導通は、50 V以下の電源で導体に電流を流し、ベル、ブザーなどによって断線の有無を調べる。」

 この規格を参考にワイヤーハーネスの検査では通常、導通検査をおこないます。導通検査では検査されるワイヤーハーネスが電気的に正しい回路になっているかどうかを検査するために断線(オープン)と短絡(ショート)が無いかどうかを確認します。本来、電気的に繋がっていなければならない箇所が繋がっていないことを断線、繋がってはいけない箇所が繋がっていることを短絡といいます。厳密には短絡は電位差のある2つ以上の点を非常に小さい抵抗値の導体で接続することをいいますが、ワイヤーハーネスの検査では上記のように考えます。

 断線と短絡に関して以下、図で説明します。例1が正しい配線だとします。AとB、CとDが繋がっています。


例1 正しい配線


例2 AとB間で断線

 例2はAとBが電気的に繋がっていない断線です。電線の内部導線が切れている、圧着の不良、ハウジングへのコンタクトの挿入不足など様々な要因が考えられます。


例3 AとC間で短絡 (且つ、AとD間で短絡、BとC間で短絡、BとD間で短絡)

 例3は繋がっていないはずのAとCが繋がってしまっている短絡です。一見するとAとCだけの短絡のように感じますが、回路上で電気的にはA、B、C、Dの全てが繋がってしまって短絡しています。導体の一部が切れて隣の導体に接している、半田不良のため隣の半田に電気が流れる、遮蔽シールドがAとCを繋いでしまっているなど様々な要因が考えられます。このような隣接部が電気的に繋がってしまうのは誤配線(配線を間違えること)というよりは、何かの要因で電気が意図せず隣接部に流れてしまうケースがほとんどです。


例4 AとB間で断線、CとD間で断線、AとD間で短絡、BとC間で短絡

 例4は典型的な誤配線の例です。断線と短絡が同時に起こっています。本来はAがBに繋がるところをDに繋いでしまっています。CとDも同様に繋ぎ間違えています。このようなケースは誤って配線をしてしまったという不良がほとんどです。

 ワイヤーハーネスの導通検査ではこのような断線と短絡が無いかどうかブザーを用いて検査します。検査は基本的に端末を総当たりでチェックしていきます。
 例えば以下のような10個の端末を持つワイヤーハーネスの導通検査をおこなう場合は、まず1に着目すると1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、1-7、1-8、1-9、1-10の全ての導通をチェックして1-6のみが繋がっている事を確認します。次に2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8、2-9、2-10を全て導通をチェックして2-7のみが繋がっている事を確認します。このように3,4,5,6,7,8,9と同じようにチェックすると全ての回路の繋がりの可能性を検査するのが総当たり検査の考え方です。


例5 端末が10個の配線(正しい配線とする)

 製造の現場では1-6、2-7、3-8、4-9、5-10と繋がっているべき部分のみの導通をチェックして検査を完了させているケースがみられますが、これでは1-2が繋がっているなど他の部分の電気的な繋がりは見逃されてしまいます。厳密には全ての可能性を検査すべきです。

端末の数をnとすると、総当たりで検査すべき回路数は以下の式で表すことができます。

 従って端末が増えるほど総当たりの回路数はどんどん増えて、例えば端末数が100の場合は4950もの回路を検査しなければなりません。人の手によるブザーでの検査では時間がかなり掛かり、間違えが起こる可能性も高くなります。

 このように端末数が大きい場合の導通検査はハーネスチェッカー(導通検査器)を用いて検査すると検査時間が大幅に短縮できて、かつ人為的な間違えを減少させることができます。

 導通検査で電気的な繋がりが正しくても製品としては異なる場合もあるので注意しましょう。例6はその一例です。断線と短絡をチェックするとどちらも同じ結果となりますが、繋がり方の構造が異なるのでワイヤーハーネスとしては別の製品と区別されます。どこの配線がツイストペアとなっているかも導通検査だけでは判定することは難しいです。

 また端末数が増えてくるほど導通検査で断線と短絡が起きている箇所が判明しても、実際に配線のどこがどう間違っているのか特定するのは難しくなります。


例6 電気的な繋がりは同じと判別されるが、構造が異なる製品

ワイヤーハーネス の検査のまとめはこちら >>