受注形態に関する各社の違い

2017年06月26日

調達・見積

 ワイヤーハーネスは様々な機械に使用されるため、経済成長期に需要が非常に伸びました。そのため、大手企業や系列のメーカでワイヤーハーネスを製造する作業が追い付かず、製造を外注したり内職で賄ったりしてきた歴史があり、下請け色が強い傾向があります。

 何か製品を企業から調達する場合、入手したい製品を注文して製品を調達するのが一般的ですが、ワイヤーハーネスの製造では下請けの歴史からいくつかの受注形態があります。ここでは受注形態について説明します。

1、完全無償支給型

 ワイヤーハーネスの構成部品である電線・ケーブル、端子、コネクタ、外装品などの部材を発注元から無償で支給してもらい、その部材でワイヤーハーネスを製造し、完成したワイヤーハーネスを発注元に納める受注形態です。

 この形態はワイヤーハーネスを製造する企業が部材を先行で購入する必要が無く、部材調達の投資が必要ないため、製造元の資金繰りに優しい受注形態です。また、発注元が構成部品のメーカで部材を持っていたり、購買力が強く無償支給した方が製造原価が安価になる場合などは発注元にもメリットがあります。

 部材以外に設備も無償支給することもあります。この場合、製造元は設備投資が必要なく仕事を請け負うことができるため、更に資金繰りに優しい受注形態となります。発注元にとっては設備投資が必要となりますが、設備は自社の物であるので情勢によっては設備を引き上げて他で製造するなど対応の自由度は高くなります。

 完全無償支給型は製造元に設備や部材の調達が無く、製造作業のみを請け負っている受注形態であるので作業外注、組立外注などと呼ばれています。

2、自己調達型

 完全無償支給型の逆で、部材や設備を製造元の資本で調達する受注形態です。製造元は部材や設備の投資が必要となりますが、自社所有の機械や部材が増えるため設備力が増強していきます。

 自己調達型は部材支給のやり取りや設備の貸与もないため、発注元としては発注にかかる工数を低く抑えることができ、設備投資も不要となります。

 自己調達型の特徴としては、設備投資を続けてきているため様々な機械設備を有しており、製造効率が高いためコスト競争力が強く、製作できる製品の幅も広いといったことが挙げられます。企業によっては部材調達力も高く、製造原価を安価に抑えられる場合もあります。なお、自己調達型は発注元の都合によって完全無償支給や一部無償支給にも対応可能です。

 自己調達型は部材の支給や設備の貸与が必要ないため、完全無償支給型の作業外注と比較して完全外注と呼ばれることがあります。自己調達型の企業は部材や設備へ投資する資本的な余裕があり、財務的に安定していると考えられます。

 なお、自己調達型であっても資金繰りが苦しい、設備投資するほどの受注予測数が無いなど情勢によっては無償支給を希望してくる場合もあります。新規開拓や見積、発注の際には受注形態を確認しましょう。