親事業者の禁止行為(下請法)
2019年07月15日
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の汎用行為を取り締まるために制定された法律です。ワイヤーハーネスの取引は下請法でいう下請事業者が製造し、発注先である親事業者に納入するケースが大半を締めています。ここでは下請法で規制されている親事業者(発注側)の禁止行為について説明します。主な禁止事項は以下となります。
買いたたき
下請代金の額を決定するときに、①発注した内容と同種又は類似の給付の内容に大して通常支払われる対価に比べて著しく低い金額を②不当に定めることが「買いたたき」になります。②不当に定めるとは十分な協議がなされなかったり、一方的であったりというケースです。
例としては、一律に一定比率で単価を一方的に引き下げることや、多量の発注をすることを前提として提出した見積単価を少量の発注しかない場合の単価として適応するなどが挙げられます。
下請代金の減額
下請事業者に責任がないのに発注時に定められた金額から一定額を減じて支払うことを全面的に禁止しています。値引き、協賛金、歩引きなどの減額の名目、方法、金額の多少を問わず、また、下請事業者との合意があっても、下請法違反になります。
例としては「製品を安値で受注した」または「販路拡大のために協力して欲しい」などの理由で、あらかじめ定められた下請代金から一定の割合又は一定額を減額することなどが該当します。
下請代金の支払い遅延
物品等を受け取った日(受領日)から60日以内で定めなければならない支払日までに下請代金を払わないことです。受け取った物品等の社内検査が済んでないことは、支払を引き伸ばす理由になりません。また、事務処理の遅れや請求書の提出遅れなども同様に引き伸ばす理由となりません。支払の遅延には遅延利息を支払う義務があります。
受領拒否
下請事業者に責任がないのに、発注した物品等を受け取らないことです。発注元の都合による仕様等の変更を理由として、あらかじめ定められた納期に下請事業者の給付を受領しないなどは禁止行為です。
不当返品
下請事業者に責任がないのに、発注した物品等を受け取った後に返品することです。例えば受入検査を下請事業者に文書で委任していないにもかかわらず、受領後に不良品を返品することが挙げられます。なお、受領後に直ちに発見できない瑕疵であっても受領後6か月を超えて返品することは問題となります。
物の購入強制や役務の利用強制
正当な理由がないのに、親事業者が指定する物品、役務などのを強制して購入、利用させることです。親事業者が下請事業者に対して、自社が取り扱う商品の購入等を要請するといった行為は禁止されています。
有償支給原材料等の対価の早期決済
有償支給する原材料等で下請事業者が物品の製造等を行っている場合に、下請事業者に責任がないのに、その原材料等が使用された物品の下請代金の支払日より早く、支給した原材料等の対価を支払わせ、下請事業者の利益を不当に害することです。下請代金の額から控除することも対象となります。例として、下請事業者が製造加工して納品するまでの期間を考慮せずに、有償支給した原材料の代金を下請代金から控除するなどが該当します。
割引困難な手形の交付
下請代金を手形で支払う際、一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付し、下請事業者の利益を不当に害することです。割引困難な手形とは、繊維業は90日、その他の業種は120日を超える長期の手形をいいます。
不当な経済上の利益の提供要請
自社のために、下請事業者に現金やサービス、その他の経済上の利益を提供させ、下請事業者の利益を不当に害することです。協賛金や従業員の派遣などが該当します。
不当な給付内容の変更、やり直し
下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせ、下請事業者の利益を不当に害することです。例えば、親事業者や発注元の都合を理由に、下請事業者に責任がないのに発注内容を変更し、変更に伴う必要な費用の一部を下請事業者に負担させるといったことが該当します。
報復借置
これらの禁止行為に該当する行為を親事業者が行った場合に、下請事業者がその事実を公正取引委員会や中小企業庁に知らせた事を理由に、取引数量を削減したり、取引停止などの扱いをすることです。
以上が主な親事業者の禁止事項です。知らなかっただけで、中には心当たりがある事項もあったのではないでしょうか。実際はグレーな部分もあります。公正取引委員会や中小企業庁に各地の相談窓口が設置されていますので、困ったときは相談しましょう。
参照:「ポイント解説下請法」 公正取引委員会・中小企業庁 2015年11月