ハーネスチェッカーの価格
2018年07月25日
ワイヤーハーネスの電気的な特性を検査する検査器(ハーネスチェッカー)には様々な機能と仕様があり、製造メーカも複数存在しています。機能や仕様によって検査器はどのような価格帯となっているのか、ここでは初期費用や維持費用などについて説明します。
ワイヤーハーネスの検査器(ハーネスチェッカー)の価格は主に検査可能なポイント数と検査項目の種類によって異なります。
検査器のポイント数は検査器の総検査端子数のことで、ポイント数が多いほど回路数の多いワイヤーハーネスを検査することができます。ポイント数が多い検査器はより幅広いワイヤーハーネスの検査が可能ですが、それに伴い総検査端子数も多くなり検査器のインターフェースの構造や、測定回路、制御回路が増加しますので価格は高くなります。
検査項目は最も基本的な導通検査をはじめ、耐圧検査、絶縁抵抗検査、抵抗検査(導体抵抗検査)、瞬断検査などが代表的な項目となります。検査項目が多くなるほど検査器の構造や測定回路、制御回路の構造が複雑になり高額になります。
ワイヤーハーネスの検査器メーカによると検査器の機能を基準に検査器の呼称を以下のように分類しているようです。
・ハーネスチェッカー
導通(オープン・ショート・誤配線)と呼ばれる配線の電気的な繋がりを検査する検査器のこと。検査機能は導通のみ。
・ハーネステスター
導通検査機能に加え、抵抗値検査ができる検査器のこと。抵抗値を測定する機能を持つことからチェッカーではなくテスターと表現。
・ハーネスマルチテスター
導通検査、抵抗値検査機能に加え絶縁抵抗検査、耐圧検査、瞬間断線検査など多種類の検査機能を持つ検査器のこと。多機能をマルチと表現。
検査ポイントが同じ場合、検査項目の多さにより検査器の価格は「ハーネスチェッカー<ハーネステスター<ハーネスマルチテスター」となります。
またハーネスマルチテスターと呼ばれるハイスペックなモデルでは、検査可能な試験電圧範囲が大きく、導通抵抗値、絶縁抵抗値の測定可能なレンジが広いほど高額な検査器となります。
同ポイント数で検査項目が違う場合の例では、メーカにも依りますが128ポイントの各種ワイヤーハーネスの検査器の価格帯は大よそ以下のようになります。
<128ポイントの検査器の検査項目別価格帯>
ハーネスチェッカー 10数万円~20万円
ハーネステスター 20数万円~40万円
ハーネスマルチテスター 30数万円~100万円
また同じ検査項目でポイント数が違う場合の例では、メーカにも依りますがハーネステスターにおいては、大よそ以下のような価格帯となります。
<ハーネステスター(導通検査器)のポイント別価格帯>
128P 20万円~30万円
512P 50万円~100万円
1024P 100万円~100数十万円
2048P 200万円~300万円
4096P 400万円~600万円
なお、ワイヤーハーネスの検査器はワイヤーハーネス関連設備を販売している商社から購入する場合が通常ですが、購入先の入手経路で価格が変わりメーカからの卸値が不明確な場合があります。ワイヤーハーネスの検査器は単価が高いものも多く、購入先によって10万円単位の価格差が生じる場合もありますので購入時には注意が必要です。検査器メーカの中にはナックコーポレーションのように表示価格(定価)でメーカから直販もしている場合もあります。このようなケースでは価格は明瞭で、割安な傾向にあるようです。
検査器メーカの技術革新は年々進んでおり、過去のモデルよりも最新のモデルの方が安価で費用対効果が高い傾向にあります。例えば128ポイントの一般的なハーネスマルチテスターの価格は1980年代では500万円~600万円もしていましたが、1990年から2000年代には150万円~300万円となり、2010年代では50万円~120万円程度になりました。時代と共に検査器のサイズや消費電力も小さくなってきています。
ワイヤーハーネスの検査器は購入者の要望に合わせカスタマイズした製品も存在します。カスタマイズ製品の価格は仕様によって様々ですが、一般的に標準製品より高額です。またワイヤーハーネスの検査器の周辺機器としてアダプター治具、フットスイッチ、大型点灯ランプなど各種オプションがあり、通常は追加料金となります。
また検査器をパソコンに接続する場合にはパソコン用のソフトウェアが必要となりますが、こういったソフトは有償か無償で提供するメーカがありますので確認が必要です。
以上、ワイヤーハーネスの検査器を購入する際の初期費用(イニシャルコスト)について説明してきました。次にワイヤーハーネスの検査器の維持費用(ランニングコスト)について説明します。維持費用(ランニングコスト)は主に校正費用と修理費用です。
校正とは照合用標準器を用いて検査器が出力する値と真の値との関係を求めることです。校正を行うことで、検査器は検査結果の信頼性を確保することができます。検査器のメーカや機種にも依りますが校正費用は2万円~10万円程度です。なお、古い機種やハイスペックな製品は校正費用が高い傾向にあります。校正は通常年1回おこないますが、検査器を使用する会社の品質基準によって適切な期間を定める必要があります。
検査器が故障した場合には、当然修理が必要となります。修理内容によって費用は異なってきますのでそれぞれ検査器メーカにお問合せ下さい。
部品の耐久性によって修理の頻度は変わってきます。例えばスイッチャー部に半導体を利用している検査器は故障する可能性は低いのですが、メカニカルなリレーを用いていると故障頻度が高く、64ポイントあたりの部品交換に数10万円かかるようなケースもあります。耐久性の高い検査器の方が当然ランニングコストは低くなります。
また検査器の使用頻度や使用環境によっても修理の頻度は変わってきます。使用頻度が高く、使用環境も厳しい場合ほど耐久性の高い検査器の方が長期のランニングコストは低く抑えられます。