利益率の経営分析

2017年05月01日

運営・経営

経営分析の手始めとして、資本利益率を用いることがあります。資本利益率は、投資資金がどれほど利益を生み出したかを示す指標です。

資本利益率=利益÷資本 (単位:%)

「利益」や「資本」とありますが、損益計算書上、利益は5つありあす。総資本や自己資本など、資本にも種類があります。そこで、資本利益率は、何を分析したいかにより、各種利益と各種資本を対応させて組み合わせることになります。

利益と資本の組み合わせにより、次のような代表的な指標があります。

1:総資本経常利益率=経常利益÷総資本 (単位:%)
総資本=資産(貸借対照表B/Sの左側)=負債+純資産(貸借対照表B/Sの右側)

資産全体を示す総資産(総資本)と、経常的に発生する収益・費用を反映した経常利益を用いる指標。会社の全般的な収益性を表します。

2:経営資本営業利益率=営業利益÷経営資本 (単位:%)
経営資本=総資本ー有価証券、遊休資産など(営業活動に関係のない資産)

経営資本は、営業活動のために保有している資産のことです。この経営資本に対する利益は営業利益になります。この指標は、営業活動(ワイヤーハーネスの製造や部品販売など)自体の収益性を分析したい場合に用います。

3:自己資本純利益率=当期純利益÷自己資本 (単位:%)
自己資本=純資産

株主の観点から収益性を分析したい場合に用いる指標です。株主の持ち分である自己資本と、最終的に株主に帰属する利益である当期純利益を使います。ROE(=Return On Equity)という言葉をニュース記事で見ることも多いかと思いますが、ROEは自己資本純利益率のことです。株主が多数いる上場企業では重要な指標となります。

これらの指標は、比率を計算するだけでは何の分析にもなりません。過去の比較や業界平均などと比較することが必要です。ワイヤーハーネス製造の業界は中小・零細企業が多いため、財務会計を公表している大手企業を除いて、業界平均や他社の状況を把握し比較することは困難です。しかし自社に関しては過去との比較や指標の推移は把握できます。

会社全体の収益性は、総資本経常利益率で把握できました。ただ、改善点や問題点を追求するには、総資本経常利益率では浅すぎます。

「会社の業績が悪いから改善しろ!」といわれても、何をすればよいのかわかりません。問題点が明確でないからです。この漠然とした問題を、「利益が低い理由を解明しろ」、「資産が無駄になっていないか調査しろ」と変えるだけでも見方は大きく異なります。原因追及や改善の方向性がはっきりするわけです。

そこで、総資本経常利益率を次のように分解します。


(総資本経常利益率)=(売上高経常利益率)×(総資本回転率)

ただの数字遊びのように思うかもしれませんが、この式は総資本経常利益率を2つの指標に分解する重要な意味があるものなのです。

売上高利益率は、売上高に対してどれだけ利益が残ったかを表す指標でした。損益計算書では5段階の利益がありますので、使う利益によってどの段階に問題があるのか見えてくるわけです。

総資本回転率は、総資産の貢献度を表す指標です。資産が有効利用されていなければ、業績に悪影響が出てくるはず。
このように、比率を細かく分解していくことで、より深い分析ができるようになります。これは比率分析に共通していえることです。

参照:「ゼロからわかる!決算書」 著者:石島洋一、石島慎二朗 PHP研究所