減価償却費とお金

2017年05月01日

運営・経営

販管費の主要な項目の1つに、「減価償却費」があります。これは、どこの会社でも計上されているものです。

 ここで例を考えてみましょう。奮発して高級車を600万円で買ったとします。そして快適なドライブを5年間楽しんだのちに、別の車に買い替えることにしました。ところがこの車、買い替えの時には100万円でしか売れませんでした。なぜでしょう?

 当然、車を乗り回し、時間が経つにつれて劣化したからです。車そのものは同じでも、価値は確実に下がっているのです。この例の場合、5年間で500万円分の価値が減少したことになります。この固定資産の価値減少を表す費用項目が「減価償却費」なのです。

 車のように長期間使う固定資産は、購入したときに全額をその期の費用としたのでは、費用負担が大きすぎます。使用している会計期間に応じて、費用負担するのが正しい会計の考え方でしょう。価値の減少が”発生している”ことに着目し、費用計上する考え方を「発生主義」といいますが、減価償却費はその典型例でもあります。

 例えば6年の間、徐々に価値が減少すると仮定し、600万円÷6年=100万円の費用を毎年計上するのです。お金を各年に支払っていなくても、こうして価値の減少分はしっかりと損益計算書に減価償却費として記載されます。なお、この「6年間使うだろう」という固定資産の使用見込み年数を、「耐用年数」といいます。

 国税庁の発表する耐用年数表には、建物や機械などの耐用年数が定められています。

 減価償却費は実際のお金の動きと違うので注意が必要です。資産を現金一括で購入した年は、購入した現金が一度に出てしまいますが、損益計算書では「購入価格÷耐用年数」の分しか経費として表れてきません。一方、資産を購入した翌年からは現金は出ていきませんが、損益計算書上は経費として減価償却費が表れてくるのです。

 例えば、減価償却にあたる資産を購入しなかった年で利益が0円でも、その年の減価償却費が500万円であれば、手元の現金は500万円ほど増えます。利益が0円だと手元のお金は増えないように感じてしまいがちですね。減価償却費はこのようにキャッシュフローに影響しますので資金繰りを考えるにあたって理解しておくべき項目です。

参照:「ゼロからわかる!決算書」 著者:石島洋一、石島慎二朗 PHP研究所