インタビュー 株式会社三洲ワイヤーハーネス 南社長

2020年01月29日

インタビュー, 特集

 今回はワイヤーハーネスの製造をされている株式会社三洲ワイヤーハーネス(以下、三洲ワイヤーハーネス)の南社長にお話しを伺いました。三洲ワイヤーハーネスは愛知県に本社があり、1本の試作に注力するなど新しい取り組みをされている企業です。その他にも面白い活動をたくさんしていらっしゃるようで、どんな話が飛び出してくるか楽しみですね。

――三洲ワイヤーハーネスの設立経緯と南社長の経歴を教えてください。

 1948年に三洲電線株式会社という電線の導体を製造する会社が創業し、導体の特性を研究するための関連会社として1982年に中部ワイヤープロセスが設立されます。中部ワイヤープロセスではワイヤーハーネスの加工も手掛けるようになり、1985年12月に社名を変更し三洲ワイヤーハーネスが誕生します。自動販売機など多様な機械装置のハーネスを製造していました。大手企業の長野工場立ち上げに誘われ、1987年には長野県飯田市に飯田工場を設立します。

 私は三洲ワイヤーハーネスがある愛知県の刈谷市出身です。刈谷市は周囲を含めデンソー、トヨタ自動車、アイシン精機などのメガサプライヤーと関連が深い街です。学校を卒業後はゼロックス系の企業に就職しカスタマーエンジニアとしてコピー機の修理をしていました。当時は今よりもアナログ時代だったので修理は頻繁に行われていました。MS-DOS、Windowsが出てくるとコピー機、FAX機という形態からデジタル化が進み、パソコンと接続できるプリンターが主流となります。デジタル化によってこの業界ではプログラミングの技術も必要となり、システムエンジニアとしてWindows95のコアな部分まで勉強することもありました。

 それから顧客の業務プロセスの問題・課題を把握し、システムを組み合わせて改善するソリューション営業を担当するようになりました。金融機関、官公庁、製造業などのネットワーク、セキュリティー、図面管理など多岐に渡る企業と各種業務の改善をしてきました。

 三洲ワイヤーハーネスの現会長は義理の父にあたり、会社の経営に興味があれば見学に来ないかと誘われ、35歳で三洲ワイヤーハーネスに入社しました。最初は現場に入って自動機、圧着、半田、組立など製造部で製造を学び、その後は営業部に所属しました。工場長、統括部長を経て2016年6月に代表取締役に就任しました。

――御社の強みを教えてください。

 愛知県と長野県の工場では仕事の種類が分かれています。愛知は民生向け、少量多品種に対応しており弱電から強電と幅広く対応し60SQまでの太物も得意です。一方、長野が車載向け、量産に対応しています。2つの工場の特色に加え長年培った技術の蓄積もあり、幅広い種類の仕事に対して少量も量産も対応することができます。

 近年、力を入れているのが試作に特化したワイヤーハーネスの1本製作です。背景として、試作段階が終了し量産段階へ移行してくると海外や大手企業との厳しい価格競争に巻き込まれてしまうことが挙げられます。試作段階では、製造の難易度は高くなりますが価格競争は量産に比べて少ないのです。弊社では1本の試作に対応できる社内システムを構築しました。また、試作専用のWEBサイトを立ち上げ、インターネプコンなど展示会にも出展して本サービスをアピールしています。実績も積み重なってきています。

 他にもハーネスワールドという部品や電線の小売り販売サイトを立ち上げ、BtoC、BtoB向けにワイヤーハーネス関係の部品や電線を1個、1Mから入手できるサービスを提供しています。このサイトはYahooで展開していて、小ロット調達のニーズに対応しています。

――御社は面白い活動をたくさんしているように感じます。どういった社風なのでしょうか?

 会長が仕事に遊び心や楽しさを取り入れるといった考えを持っていて、それが社風に現れています。FaceBookにて社内の出来事やイベントを掲載していますが、夏には会社で流しそうめんをおこなったり、最近CMで見かけるハズキルーペを社内に導入してみたりと型にはまらずいろいろと試したりしています。弊社ではWindowsではなくMacのPCが多く、iPadを営業で用いていますので、珍しがられますね。営業車両は営業の担当者が乗りたい車を選び活動に楽しさを持っていたりと、こういった事は語りだすとキリがないかもしれません。(笑

 社内教育にも楽しく学ぶことが取り入れられていて、MG(マネジメントゲーム)を社内教育に活用しています。MGはソニーが開発した経営者研修で、ソフトバンクなど有名企業で利用されています。このゲームをやると仕事の勘所など会社の仕組が理解できて意思決定が早くなり、幹部や幹部候補は必ずやっています。非常にお勧めです。生き残るために、しっかりと成長していくというのも社風の一つです。教育に力を入れています。

――事業を継承してどのようなことを変えてきましたか?

 世代交代を進めてきていて、20代を主に採用し平均年齢は41歳と業界では若い方だと思います。工場長は35歳で私も43歳と幹部も平均よりは若い方ではないでしょうか。

 前職ではITを活用しながら多岐に渡る企業のいろいろな業務改善をやってきましたので、その経験から社内システムの各種改善を進めてきました。例えば見積方法を改善し体系化しましたので、新入社員でも少し学べば見積りができます。弊社の強みである1本試作も、その見積、受注、製作に対応した社内システムを構築してあります。1本試作に関しては量産低価格というレッドオーシャンを避ける戦略面も意識してこだわってきました。

 他にも体系化、システム化したい部分は社内にたくさんあるのですが、徐々に実現させてきています。あまりあれこれ劇的に変えると、社内がついてこれなくて混乱してしまいます。システム構築は急にレベルが高いことを導入しようとするとうまくいきません。スモールスタートをして少しずつ拡大し、対応部署拡大、全社拡大とステップアップすることを意識しています。

――業界の今後についてのお考えや、やっていきたいことはなんですか?

 今後の業界はより厳しくなってくると思います。国内での需要は車載関係など含め全体的に減っていくでしょう。廃業する会社も増えてきたので、どういった仕事が残ってくるか見極めていかなければなりません。

 私はF1のワイヤーハーネスをやってみたいと社内にずっと言い続けています。何度もこの業界にアプローチを試みて知ったのですが、F1向けは使っている素材が全く違い、高級な部品も多く、知らないメーカの部品もありました。参入のためにチャンスをどうやって掴むか引き続き考えています。F1向けは弊社が力を入れている1本試作に該当しますし、もし弊社のワイヤーハーネスが採用されてその車体がレースに出たらと思うと想像するだけでも楽しいです。

――インタビューを終えて

 三洲ワイヤーハーネスはとにかくいろいろな取組をされている印象を受けました。様々な体系化、システム化といった抜本的な改善から、ちょっとしたことまでとにかく話を聞いていると面白いことばかり。南社長の改善施策や新しいことを取り入れていく姿勢は大変勉強になりました。常に新しい情報を取り入れて、変わっていかなければと感じました。

南社長、ありがとうございました。

株式会社三洲ワイヤーハーネス 代表取締役社長 南友樹

https://www.swh21.com/

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